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日本服飾史

平安時代


  

院政時代の公家女房晴れの装い


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 公家女房晴れの装いは、現在宮中では、五衣(いつつぎぬ)、唐衣(からぎぬ)、裳(も)の服といわれ、俗には十二単(じゅうにひとえ)の名で呼ばれている。この装束は10世紀後半には成立していると考えられている。この形式をうけついだ平安時代後半、院政時代といわれる白河、鳥羽、後白河法皇の時代、11世紀末から12世紀末に至る100年の間は服装の面でも最も絢爛豪華な時代であった。
 公家女房装束が異様なまでに飾られ、身につけて居ならぶるばかりでなく殿内の装飾として母屋と廂(ひさし)の境に上部には翠簾を吊し、下部には打出の装束として几帳の骨[木部]様式のものに掛けて並べ、又牛車の後部の翠簾下の飾りとする出衣(いだしぎぬ)としこの装束が用いられている。
 当時の状態は律令制度の崩壊により、国の主権を執行するのが、天皇ではなく上皇、法皇といわれる前天皇で院と称される法制外の組織で、その下に国の税制外に存在する院の荘園よりの収入によってまかなわれるものであり、又、平氏の全盛も平氏の荘園よりの収入や平氏のもつ中国宋との貿易収入によるものであった。そのさまは「天下過差遂日倍増……」[中右記大治4年[1129]7月15日の頃]と中御門宗忠も記している。公家自らが認め反省している所でもある。
 この当時の文献として建春門院[後白河院の妃平滋子]に仕えた中納言建寿御前の日記や、「玉葉」「吉記」「山魂記」「兵範記」「中右記」又「明月記」「今鏡」などにも現れている。この研究については清田倫子氏の「宮廷女流日記文学の風俗史的研究」によく尽くされている。
 建春門院が3日間の行事に毎日異ったすばらしい物具の装束[女房装束のこと]を身につけ、つきしたがう女房40人も劣らぬ唐衣裳であり、殿内の装飾とされるものも建春門院は十一具六間分[玉葉安元2年3月4日、後白河法皇50御賀所々打出の項]など記されている。
 又、有職故実の解説書として現存する最古のものと考えられている「満佐須計装束抄」は12世紀後半頃の作であり、[源雅亮著]この書の終りの所に女房装束に関する記述がある。前記日記類と照合する所が多い。裳、唐衣の所を次に記すと、
 もにたまのうはざし、つねのことなり
 くるまにはのる人のしなにしたがへ、おり物
 りうもんあひまじることなり
 うはぎ いかさまにもおりものなり
 からぎぬにはひもといふものあり、からぐみのい
ろいろなるにて、あ(揚)げまきににな(蜷)をむすびて、六す
ぢも八すぢもして、からぎぬのおほくびのかみは、
うらうへにつけたるなり、うちでにも、くるまのき
ぬにあらば、そでのうへにと(外)にひきいだしてさぐべ
し、きぬからぎぬ、うはぎ□きなりまて、やうやう
に色をつくし、にほひ□てする常の事なり[以下略]
とあり、又、建春院門院中納言日記にも「唐衣に紐つけ花結びなどしたるも見えき」又、錦の唐衣、玉の紐とかや」などある。
 この唐衣に紐をつけるということは今迄不可解とされていたが私の考証に於いて、襟の部分左右ではないかとしてみた。小忌衣(おみごろも)に紅紐があり、右肩又左肩につけているので紐を衣の飾りとする例があり、直垂等の胸紐を飾りとする事、狩衣、半尻等に袖括りの緒があり、装飾的な用い方がされている。江戸時代の裳につける懸帯には立派な刺繍がされている事がある。又唐衣を身につけた腕を前に置くと、この飾り紐は襟以外につける所はないのではないかと考えられる。
 又は、紐を前二垂れ、後一垂れとしたのは現在も用いられている修験者の木綿欅がこの三垂れの形式であり、これを参酌した。

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1  唐衣(からぎぬ)の紐
2  唐衣(からぎぬ)
3  表着(うわぎ)
4  打衣(うちぎぬ)
5  衣(きぬ)[袿(うちき)]
6  帖紙(たとう)
7  檜扇(ひおうぎ)[衵扇(あこめおうぎ)]
8  裳の小腰(こごし)
9  単(ひとえ)
10  張袴(はりばかま)[打袴(うちばかま)]
11  裳(も)の大腰(おおごし)
12  地摺(じず)りの裳(も)
13  裳(も)の引腰(ひきごし)




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