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六條院四季の移ろい

長月(ながつき)(九月)


ヤマジノホトトギス
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ホトトギス
ヤマハギ
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サクラタデ
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ツリフネソウ
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リンドウ
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ススキ
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重陽(ちょうよう)(菊花宴) 九日
* 九月九日の行事が重陽。中国の陰陽思想における奇数は「陽」であり、めでたいものであるが、重なると逆に邪気を生じると考えられ、それを払う行事を生じた。三月三日、五月五日等もそうだが、陽数の最大の九が重なるのを特にこのように呼んだのである。

ちょうど菊花が盛りの時期で、宮中では菊を観賞しつつ詩歌を詠んだりする「菊花の宴」がさかんに行われた。菊は元来、万病を避け、不老長寿を保つ薬草として日本に渡来したものである。そのため、菊を浸したり花びらを浮かべたりした酒「菊酒」を飲んだり、前夜、菊花に色とりどりの綿をかぶせて花の露を含ませ、翌九日の朝、それで肌を撫でたりした。これを「菊の着せ綿」という。いずれも菊の霊験を願うものである。

またこの日は、赤い袋に茱萸(ぐみ)を入れ、高い山に登って菊花の酒を飲んで難を逃れたという中国の伝説の影響で、茱萸を緋色の袋に入れた「茱萸袋(ぐみぶくろ)」が作られた。宮中では清涼殿(せいりょうでん)の御帳台(みちょうだい)の柱に付けられ、翌年五月五日に薬玉(くすだま)と取り替えられる。

菊は不老長寿の花

菊は別名を「翁草(おきなぐさ)」「齢草(よわいぐさ)」「千代見草」などといい、古くから不老長寿の薬効があるとされてきた。中国では、周の穆王の童(後の彭祖)が菊から落ちた露の水を飲み、不老不死になったという話がある。「菊花の宴」において、菊の花そのものではなく、宿った露や菊を浸した酒が重要視されたのはこのためである。ちなみに、能の曲目「菊慈童(きくじどう)」は、魏の文帝の命により霊水の源を求めて山に入った一行が、この穆王の童(彭祖)に出会い、菊の葉から滴り落ちた水こそが霊水であると教えられる、という話である。

* 虫を聞く

月の皓々(こうこう)と照る草の野に、可憐(かれん)に鳴く秋の虫を王朝の貴族も愛した。光源氏は六條院の春の御殿の寝殿で出家して仏道生活を送る女三宮のために、西の渡殿(わたどの)の前の西の対との隔(へだ)ての塀際までに静かな野原の風情をこしらえて、秋の虫を放った。八月の十五夜に源氏が訪れると、虫の音が乱れるように繁く鳴いている。おりしも、女三宮は仏前で陀羅尼(だらに)を念誦しているところであった。源氏も一緒に唱えながら、ひとしきり虫の話になる。

虫の音の中でもとくに格調高く尊ばれたのは松虫であるが、これは現代の「スズムシ」のことである。ちなみに鈴虫は現代の「マツムシ」で、平安時代と現代とでは名まえが入れ替わってしまった。秋好む中宮がわざわざ遠い野原から松虫を捕ってきて秋の御殿に放ったのにあまり鳴かなかったらしい。源氏は松虫がなんといっても一番であるが、鈴虫も親しみやすく陽気に鳴く、などと批評している。

やがて兵部卿宮(ひょうぶのみや)や夕霧も参上して虫の音談義になるが、それも一とおり落ち着くと、琴や横笛などの楽器が持ち出され、虫の音と合わせるように、管絃の遊びがはじまる。

名前ともの

平安時代の貴族たちは、季節の移り変わりに敏感で、細かな変化をも衣裳の重ねや歌に取り入れるほどであったが、その物が現代の物と同じであるか、さらにはその物を実際に知ってたかというと疑わしい。例えば、藤原良経の歌、「キリギリス、鳴くや霜夜の…」は、夏の虫であるキリギリスが晩秋の虫として登場する。今現在、キリギリスと呼んでいる虫のことか怪しいものである。虫を分類する物差しが異なるのだから、当然と言えば当然のことである。実際に見たことがなくても、物語や歌に出てくる名前でイメージを作り上げていた場合も多いだろう。

現在では、学名によって分類される名前があるが、当時の人たちにとっての分類に基づく名称があるのはもっともな事である。「あさがお」がキキョウやムクゲと言った朝に咲く花全般を指していたのも同じことである。古代の物語や歌を読む時、これはこれと決めつけるのではなく、当時の人々の目や心で接し、その時代に浸ってしまうことも必要である。




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